復活の地

★★★☆☆

復活の地1

小川一水著
出版社 早川書房

発売日 2004.06
価格  ¥ 756(¥ 720)
ISBN  415030761X 2巻
発売日 2004年8月上旬
価格  ¥ 756(¥ 720)
ISBN  4150307660

復活の地2

復活の地3

3巻
発売日 2004.10
価格  ¥ 798(¥ 760)
ISBN  4150307709
地震災害における災害復興をテーマにしたSF。
舞台は地球から飛び立ち、殖民した星間惑星のひとつ。
しかし失われてしまった技術は、必ずしも星間旅行を容易なものとはしていない。

技術力としては今の地球とさほど変わりないかもしれない。

そして、貴族などの階級制度と、高皇…血縁で継続される王政の存在。
それは戦前の日本をモデルとした社会形態である。

首都を襲う大地震。逃げ惑う人々、遅れる行政の対応。
高皇一族も、辺境にいた一人を除いて全て死に絶えてしまう。
気高く、賢いが世間知らずのお姫さま。スミル。
アーサーヘイリーの小説にでも出てきそうな、孤高に果敢に目の前の災害に取り組む主人公、セイオ。

個々の被災に関わるエピソードやそれに取り組む数々の魅惑的なキャラクター達はよく書き込んである。
そして、筋立ても悪くない。
それでもいまいち物足りない。

もう一度やってくる大地震にどうやって立ち向かうのか。主要キャラクターの奮戦が続く。
しかしこの辺りになると夢物語の要素が強くなり、リアリティに少しずつ欠けていく。キャラクター達の動きも水面下に潜まり、際立ってこなくなるのは仕方ないかもしれない。

スミルとセイオのエピソードは、読み終わってみるとこんなもんかな、という感じ。それなりに説得力はあるがキャラクター達の設定上与えられた個性に比べて、何かが追いついていない感じ。
むしろ、サイ王子とネリのエピソードに焦点を当ててストーリィを展開していった方が面白かったかもしれない。あるいは、侍女サユカとソレンスの恋物語に。

スケールの大きさが、文庫3冊では書き足りないのかな。
1巻目はよかったが、3巻目ともなると広げた風呂敷を畳む場所に困っている印象。
というよりも、日本のジュブナイルにありがちなキャラクター設定を持ち出さずに、もっと当たり前に正面から筋立てを考えても、重厚な感じの面白い小説になると思うんだけどな。ちょっと未消化気味。

でも、SFとしては面白い着眼点で書かれている小説。よきかな。

? posted by Yumikoit at 01:47 pm pingTrackBack [0]

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